作成者 神永 守
小学校高学年以上
Microsoft OfficeのインストールされたWindows PC
テレメトリは宇宙開発や野生動物の研究など, 幅広い分野で使用されている技術です. 離れた地点や直接アクセスすることができない地点でなにかしらの観測を行い, 観測地点から送られたデータを用いて調査を行う方法・技術のことをテレメトリと言います. 観測側(送信側)には測定のためのセンサ類と送信機があり, 受信側には受信機とデータ処理のためのシステムがあります. データのやり取りは, 無線通信や有線通信により行われます.
ITF-2には様々なセンサと無線機が搭載されており, テレメトリを地球に向けて毎日送信しています. センサには電圧, 電流, 温度などを測定するものがあり, これらのセンサを用いて電池やマイコン, 太陽電池といった衛星各部の状態が正常かどうかを監視しています. テレメトリのデータは, 宇宙空間の送信側であるITF-2から, 地球上の受信側である筑波大学の地上局(衛星の運用を行うところ)や衛星電波の受信を楽しむ世界中の人たちに向け, 無線で届けられます. このイメージを図 1 テレメトリのイメージ図に示します. 図 1 テレメトリのイメージ図
無線通信で用いられる電波にはいくつかの種類がありますが, ITF-2はそのうちモールス信号(A1A, F2A)とパケット(AFSK AX.25)を用いています. モールス信号は人間が音で聴いてそのまま解読できる形式ですが, パケット通信は人間が音で聴いて解読するのではなく, 専用のソフトウェアを用いて解読します. この文章では, 簡単に解読できるモールス信号によるテレメトリの解読方法を説明します.
モールス信号によるテレメトリの解読方法を説明します. 本資料では「ダウンリンク解析用シート(Downlink Analysis Sheet)」(後述)を用いた解読方法と, PCが利用できない場合のための手計算の解読方法の両方を紹介します.
「ダウンリンク解析用シート(Downlink Analysis Sheet)」(以下, 「解析用シート」)は, 当プロジェクトが受信報告者の方々のために製作した, ITF-2のテレメトリの解読を行うためのツールです. 「ITF-2運用情報」から「ダウンリンク情報/Downlink」にいき, 解析用シートをダウンロードしてください. 図 2 ダウンリンク解析用シートのダウンロードに矢印で記されているリンクからダウンロードができます. 「ITF-2運用情報」のURLは https://operationitf-2.blogspot.jp/ です. 図 2 ダウンリンク解析用シートのダウンロード
この「ダウンリンク情報/Downlink」のページでは, 解析用シートのほかにも, 本資料では紹介しきれていないITF-2のテレメトリに関するより細かな情報を公開しています. ぜひ目を通してみてください.
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図 3 保護ビューの解除
モールス信号で, 最初が「s1」から始まるテレメトリの解読方法を説明します. 以降, 最初が「s1」始まるデータのことを「センサデータ1」と呼びます. センサデータ1が「s1 46 19 f2 0a」の場合を例にとります. 図 4 センサデータ1の解読を見てください. 最初に, 下のタブを見て開かれているシートが「morse decode」となっていることを確認してください. 次に, センサデータ1を図中の黄色い枠の中に半角英数字で入力してください. すると, 解読された値を上の青い枠で確認することができます. センサデータ1では, 上から順に,「2. バッテリ温度」, 「3. アンテナ展開」, 「4. 通信PIC消費電流」を確認することができます. 図 4 センサデータ1の解読 解析用シートを利用せずに手計算で解析する場合は, それぞれ以下のように計算してください(結果は有効数字3桁で記している).
19は16進数表記なので10進数表記に直し, 25を得る (バッテリ温度) = ((25 / 255) * 5.25 – 0.44) * 100 = 7.47 (度)
f2は16進数表記なので10進数表記に直し, 242を得る 値が25以下であればアンテナは閉じており, 221以上であれば展開している. よって, 242ではアンテナが展開している.
0aは16進数表記なので10進数表記に直し, 10を得る (通信PIC電流) = ((10 / 255) * 5.25) / 25.2 = 0.00817 (A)
モールス信号で, 最初が「s2」から始まるテレメトリの解読方法を説明します. 以降, 最初が「s2」始まるデータのことを「センサデータ2」と呼びます. センサデータ1が「s2 34 07 7c 66」の場合を例とります. 図 5 センサデータ2の解読を見てください. センサデータ1の時と同様にシートが「morse decode」となっていることを確認し, センサデータ2を入力してください. すると, 解読された値を下の青い枠で確認することができます. センサデータ2では, 上から順に, 「1. メイン消費電流」, 「2. 電源PIC消費電流」, 「3. DC-DC1出力電圧」, 「4. バッテリ電圧」を確認することができます. 図 5 センサデータ2の解読 解析用シートを利用せずに手計算で解析する場合は, それぞれ以下のように計算してください(結果は有効数字3桁で記している).
34は16進数表記なので10進数表記に直し, 52を得る (メイン消費電流) = ((52 / 255) * 5.25) / 25.2 = 0.0425 (A)
07は16進数表記なので10進数表記に直し, 7を得る (電源PIC消費電流) = (7 / 255) * 5.25 / 15 = 0.0961 (A)
7cは16進数表記なので10進数表記に直し, 124を得る (DC-DC1出力電圧) = (124 / 255) * 5.25 * 2 = 5.11 (V)
66は16進数表記なので10進数表記に直し, 102を得る (通信PIC電流) = (102 / 255) * 5.25 * 2.1 = 4.41 (V)
Wikipedia「遠隔測定法」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E9%9A%94%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E6%B3%95
Wikipedia「Telemetry」 https://en.wikipedia.org/wiki/Telemetry
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初版
2017年7月10日
神永 守
初版作成